其噂妖狐譚ーそのうわさだっきものがたりー
其噂妖狐譚ーそのうわさだっきものがたりー
あらすじ
玄奘法師は元は猟師の十作といったが、最愛の妹を妖怪に殺されて、その死別により出家した。
修行の旅の途中、那須野が原で道に迷い、俄かに見えた一ツ家に一夜の宿を借りる。
そこの主が一夜のなぐさみに、糸繰の唄にのせ妖怪の話を語り始める
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時は殷王朝末期。皇帝紂王の弟・薄雲は王朝を我が物にするため、兄紂王に人心を乱すと噂のある、天竺の秘宝花陽夫人の姿絵を見せる。
紂王は絵の術にかかり心奪われ絵姿の女を求め逐電してしまう。
側臣費仲は白雲の行いを「謀反」と言い立てた為、追放されてしまう。
一方、松江の浜にある殺生石まで来た紂王は、その石が割れて中から絵姿そっくりの女が現れたので「妲己」と名付けて館に連れ帰る。
そんなある日、追放された費仲の夢枕に観世音菩薩が立つ。
今の紂王は妲己の言いなりで悪政を行っていること、そしてその妲己こそ実は金毛九尾の狐で、薄雲と結託してこの国を我が物にしようと企んでいることを告げられる。
さらに、妖力を破るのに必要な「獅子王の剣」を費仲に授け、もう一つの「水神の鏡」は王宮にあるが妖力によって力が弱まっており、龍の年月揃った夫婦の血を注げば光を取り戻し、必ず妖魔を退治出来ることを告げられる。
まさに、龍の年月揃った夫婦は費仲とその妻・張楊である。
王宮では中央の悪政が続き、日夜妲己と遊興に耽り気に入らない女官は次々に殺していくという狂乱の状態。
そこに側臣費仲が現れて、妲己を妖怪と言い立て「獅子王の剣」を突きつけると、正体が現れそうになった妲己はその場を去るが、側臣費仲に狐の化身が襲い掛かる。
費仲はその化身を切り払い、薄雲を切って、我妻の張楊を殺し、自分も自害して、夫婦の生き血を鏡に注ぐと鏡の光がよみがえる。
その鏡を持った巫女の天女は妲己を追い詰め、ついに正体を現した妲己は剣と鏡の威徳にその場から逃げ去った。
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その話をしている主の形相が次第に変わり、金毛九尾の狐となる。
しかし玄奘法師の宝力はそれを増し、再び妖怪は石に閉じ込められる。